大阪弁護士会会長を走り終わって 感謝しつつ1年を振り返る

大弁会長・日弁副会長 三 木 秀 夫

1 はじめに

友新会のご推薦をいただき、令和5年度大阪弁護士会会長に就任して1年間、晴れた日、嵐の日など、いろいろとありましたが、何とか無事に役目を果たし終えることができました。これも、ひとえに友新会の皆様のお支えがあってのことであり、心から感謝を申し上げます。また、友新会からの山岸副会長には、他の副会長と協力しあって大阪弁護士会の諸問題に対処していただき本当に助かりました。

日本弁護士連合会副会長を兼務していたため、基本的パターンとして週の前半は大阪でその会務に専念し、後半を東京で過ごす生活でした。週に2回往復したことも何度かあり、気力・体力の維持にも気をつかった1年であったように思います。大阪弁護士会と日弁連とを分けて振り返ってみます。

2 大阪弁護士会「まかせとき 弁護士の力 全ての街に 全ての人に」

これは、私たち2023年度大阪弁護士会執行部のキャッチフレーズでした。様々なことをしてきましたが、特に記憶に残る点だけご紹介します。

(1)弁護士と市民をつなぐ接点という重要な役割を担う総合法律相談センターについては、その相談件数の減少への対策を検討してきました。そこで思いきって11月、12月に「法律相談料1,000円キャンペーン」を実施してみました。件数自体は前年度比で倍増となりましたが、課題も見えてきました。今後の対策に生かすための分析を行い次年度に引き継ぎました。

(2)前年度に生まれたリーガリューの「育ての親」を自称して、スターへの階段を登ってもらうこととしました。着ぐるみとして登場させ、様々な会内外のイベントに出てもらいました。また、ぬいぐるみを作ったところ、会の内外で大好評となり人気が急速に広がったように思います。さらに、子どもの権利委員会有志と子どもたちの協力を得てリーガリューソングやダンスを生み出してもらうことで、大きな発展をとげていきました。子どもダンスチームと組んだリーガリューは、枚方パークでの催しや人権フェスタでのステージで大人気を博しました。私が実行委員長をしていて、大阪弁護士会も参加しているワン・ワールド・フェスティバルという国際交流の祭典にも登場してもらい、大いに会場を沸かしてくれました。LINEスタンプや様々なグッズも発売する等、様々な形で大きく育ったかなと思っています。

(3)また、総合法律相談センターの部会の一つであった中小企業支援センターを独立した委員会とした上で、公益的で非営利事業を行うNPO等に対する法的支援のニーズにも答えるための組織変更を行いました。中小企業支援については、従前から友新会のメンバーが深く運営に関与してきており、その活動をさらに発展させるためでした。また、加えてNPO等との連携が重要となってきている中、地域が抱える諸課題について、地域資源を活かしながら継続性を得るための事業型経営に取り組むものも多いNPO等をこのセンターで支援をすることは有意義なことであると考えたためです。当会の活動に新しい風が吹くことを期待していて、多くの若手がチャレンジしてもらいたいと思っています。

(4)様々な社会的事象における人権課題については、それぞれの委員会で積極的な取り組みを進めていただきました。会長声明についても、必要と判断した際には速やかな発出に力を入れました。成年年齢引き下げ対応として、専門学校生への消費者教育講師派遣を進めたほか、離婚時の共同親権問題など、意見が対立しがちな問題にも取り組んでいきました。また、元旦に発生した能登半島地震への災害復興支援の活動にも、日弁連及び近弁連と連携しながら、金沢弁護士会の要請に応じて電話相談等を分担するなどして市民の復興への支援を実施しました。

(5)刑事分野では、取調べの全件・全過程の録音・録画の実現に向けた取り組み、取調べへの弁護人の立会いを求める活動、勾留に対する準抗告強化運動、手錠腰縄問題への対応等は、対策本部やプロジェクトチームにおいて取り組みを強め活動をしてきました。袴田事件や日野町事件などで必要性が浮かび上がっている再審法改正への取り組みは、日弁連と連携しながら、自治体首長や地方議会などへの賛同を求める活動など、改正に向けた地方からの地固めに力を尽くしてもらいました。

(6)会内的な対応として、女性役員就任促進のための環境整備には、まず足元から始めようということで、副会長会開催時刻の前倒し、電子決裁やリモート接続の積極的活用、土曜当番・午前当番の柔軟な運用などの役員業務の効率化を図る取り組みから入りました。

弁護士不祥事の根絶には執行部一同で取り組みを続けてきました。その過程で、国際ロマンス詐欺等を取り扱うというウェブ上の会員弁護士の広告の中に、弁護士法や弁護士職務基本規程に違反するおそれのあるものが生じ、市民向けの注意喚起のほか、外部公表を決断実施しました。この件では、山岸副会長が獅子奮迅の活躍をしてくれました。

3 日弁連(死刑廃止とADR、LAC)

日弁連副会長として担当した中で、最も時間と労力をかけたのは、死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部でした。さまざまな活動をしました。昨年11月の世界死刑廃止デーにあわせて開いたシンポジウム「死刑廃止の実現を考える日2023」はその一つです。特に死刑廃止国である英国の駐日大使にご出席をお願いして、英国で廃止に至った経緯や廃止に取り組む国際社会の動き等をご報告いただき、廃止に向けた多くの示唆をいただいたのが強い印象に残っています。

また、数年来の検討がなされてきた、死刑再審申立て事件の弁護人に対する費用援助制度構想について、死刑再審だけでなく、それ以外の再審申立て事件の弁護人も対象に加えた形での制度構築を進め、昨年12月の臨時総会で「刑事再審弁護活動に対する援助に関する規程」として承認を受けました。4月からスタートしています。

これ以外に、「弁護士費用保険制度(LAC制度)」と、ADR(裁判外紛争解決機関)センターも担当しました。

弁護士費用保険制度は、交通事故分野に限られず、一般民事事件をはじめ、業務妨害、ネットトラブル、近隣紛争、ストーカー対策などにも広がってきています。このため、新しい保険商品が次々と開発され、弁護士の紹介を求めて日弁連との協定締結を希望する保険会社との間の協議調整が多くありました。

ADR関係では、全国弁護士会設置のADRの運営支援のほか、法務省による「ODRの社会実装の促進に関する調査研究業務」を日弁連法務研究財団が受託し、日弁連が「ODR実証事業」の再委託を受けて実施しました。

4 この1年間、大阪弁護士会や日弁連の各委員会等では、友新会の皆様も数多く参加されていて、大変にお世話になりました。また、様々な事業や行事等では、友新会の皆様のご協力、ご支援は、本当にありがたく感じました。この場をお借りして心から感謝を申し上げます。

以上