第11回 イオンモールでの法律相談

大阪弁護士会 副会長 藤 木  久

  1.  今年は、弁護士が社会の隅々にまで進出し、市民の司法アクセスを改善するとともに、弁護士のプレゼンスを高めることを大きな会務方針にしています。その1つの試みとして、昨年10月からイオンモールにおいて無料法律相談をスタートしました。開始から4ヶ月が経過しましたので、現状を交えながらご報告したいと思います。
  2.  この企画は、理事者の発案で動き出しました。当会は、難波、堺、岸和田、千里、谷町、南河内に総合法律相談センターのサテライトを設置していますが、相談拠点が少ない、市町村役場での無料法律相談を含めても拠点が少ない、もっと市民に身近な場所に進出すべきではないかとの課題がありました。と同時に、相談センターのサテライトを設置するには、賃料、人件費などの財政的負担が大きく、安易に増設することもためらわれます。せっかくサテライトを設置しても、広報不足や場所がわかりにくいなどの理由から、相談者が伸び悩んでいるのが実情でした。
  3.  そこで思いついたのが、本企画でした。ショッピングモール運営会社と提携して、モール内で法律相談を開催できないか。モールは近隣地域に広報チラシを大量に配布しますのでそのチラシにモール法律相談を掲載してもらえないか、相談場所はモールのイベントとして無料で提供してもらえないか。モール運営会社も、利用者に無料で大阪弁護士会の法律相談を提供できればイメージアップになるし、運営会社にもあまり負担がないから、案外、実現できるのではないか。

    モール内の場所を無料で借りて、無料で広報もしてもらおうという、厚かましい企画ですが、案外、突破口があるのではないか、10社のうち1社くらいは興味をもってくれるのではないか、そんな思いでスタートしました。

  4.  当初は、府下のショッピングモールに順次依頼状を郵送する計画でしたが、会長のご指摘で、A弁護士さんがイオンさんの法律顧問をされていることがわかりましたので、A弁護士さんに協力をお願いしました。幸いA弁護士さんが協力をして下さることになり、私とA弁護士さんとでイオンさんの西日本統括部署を訪問しました。A弁護士さんの信用がものを言い、会社も協力をして下さることになりました。
  5.  次に、イオンさんのどのモールで法律相談を実施するかを検討しました。大阪南部と東部は法律事務所や法律相談拠点がありませんので、日根野店と藤井寺店を候補としました。実際に、藤井寺店と日根野店を訪問し、店幹部の皆さんと打合せをしました。事前に会社の幹部にお願いしていたため、好意的に協力をして下さいました。特に、「地域における小売業の競争が激しい、そのため地域のコミュニティープラザとなれるように頑張っている、その観点から大阪弁護士会の無料法律相談はモールにとっても重要な企画だと考える、是非成功させたい。」と積極的に協力を申し出て頂いたのには、感激しました。

    両店とも、近隣地域へ配布する広報チラシの掲載、モールのHPへの掲載、モール内の掲示などいろいろな広報をして頂きました。新聞でも取り上げて頂きました。

  6.  藤井寺店は近鉄藤井寺駅すぐに立地し、競合店がない、地域一番店です。5階の文化教室に使用している部屋で実施します。

    日根野店はJRで和歌山に行くと、日根野駅の近くに巨大なイオンモールが線路沿いに続きますが、そこになります。藤井寺店の約2倍の来館者があります。2階の会議室を使わせて頂くことになりました。

    両店とも月1回の開催です。火曜日がイオンさんの感謝デーで来場者が多いため、火曜日開催を原則としました。イオンさんからは土日祝でもよいとの提案を頂きましたが、当会の体制が整わないため残念ながら平日にしました。

    日根野店は10月20日(火)、藤井寺店は10月27日(火)にスタートしました。弁護士2名が1時から4時まで30分単位で相談を受ける、電話での事前予約とともに、当日の現地申込みも受け付けることとしました。スタートから現在までの相談実績は下記のとおりです。

    藤井寺店 10月・19名、11月・11名、12月・8名、1月・6名
    日根野店 10月 11名、11月・10名、12月・9名、1月・8名

    どうでしょう、1日の相談実績とすれば堺、岸和田にも劣りません。むしろ多いくらいです。ショッピングモールという市民に密着した場所に法律相談拠点を設置でき、広報チラシやモールのHPを通じて弁護士のプレゼンスを高めることができます。職域拡大でも有益です。しかも、実施のための経費はほとんどいりません。法理相談拠点を増やす、良い方法だと思われませんか。

    もっとも、この方式には消極的な意見もありました。弁護士会の法律相談は有料が原則であり、無料相談は慎重であるべきである。自治体から有料法律相談を受託しているのに、自ら無料相談を実施すると自治体からの有料委託がなくなってしまう。弁護士会が郊外へ進出するとその地域の弁護士の業務を圧迫することになる、などです。

皆さんはどうお考えになりますか。

以上