第2回 「専門相談」開始に伴う講座受講義務について

大阪弁護士会 副会長 三木 秀夫

【「専門相談」開始に伴う講座受講についてご注意ください!】

総合法律相談センターでは、「専門家に相談したい」という市民のニーズに応えるため、平成23年度より、専門相談制度を導入するための準備を進めています。このため、サラ金被害や交通事故、消費者被害などの各専門相談分野につき名簿登録要件を定め、これを充足した相談担当者のみに「専門相談」をご担当頂くことになります。専門相談分野とは、「労働事件法律相談」、「交通事故被害者救済業務」、「サラ金被害者救済業務」、「消費者被害救済業務」、「医療事故被害者救済業務」、「知的財産相談」及び「建築相談」の分野です。

登録要件は、一定の基準日において(1)専門相談毎に決められた一定の「研修受講の要件」を満たしていることと、(2)専門相談毎に定めた一定の実務要件等を満たすこと、です。

これについて、サラ金被害者救済の登録要件を例にとれば、(1)基準日において、運営委員会が指定する研修(「自己破産」・「個人再生」・「債務整理全般」の3つのテーマ全て)を受講することと、(2)依頼者が、弁護士費用を一括で用意できない場合においても、これを理由に受任を拒否せず、合理的な期間の分割に応じるか又は法律扶助を利用することを誓約していることの2点のいずれをも満たす必要があります(基準日とは、当該専門法律相談が実施される各年度の4月1日をいいます。)。

平成23年度より、専門相談とする分野の相談員としてご登録いただく場合には、これら要件を満たしていないと登録から除外されてしまいますので、くれぐれもご留意願います。

特に、今後行われる各種研修については、受講義務の対象となることがあるので、必ず案内には注意していってください。漫然と必要な研修を受けないでいて、来年になってから、いつものように登録をしようとした時点で、初めて登録要件を満たしていなかったなどと言って、慌てないように、よろしくお願いいたします。


【司法修習生の給費制維持の署名活動について】

いま、日弁連を先頭に、司法修習生の貸与制導入の見直しと給費制の維持を求め、署名活動をはじめとする各種運動をしています。

私たちは、司法修習生時代、給費制という制度にもとづいて"給与"が支払われていました。これが、今年の11月から廃止されて、必要な者に対し生活資金を貸し付ける制度(貸与制)に切り替わろうとしています。これは2004年の裁判所法「改正」によって決められ、その施行期日が2010年11月1日とされているためです。

なぜ、このような運動が、今年になってから始めることになったのでしょうか。これは、最近になってから、最近の司法修習生の半数に「借金」があることが分かってきたからです。日弁連が2009年11月、司法修習入所予定者(新63期)を対象に実施したアンケート結果で、回答者の約半数以上が法科大学院で奨学金を利用したと回答し、そのうち具体的な金額を回答した783名の利用者が貸与を受けた額は、最高で合計1200万円、平均で318万円に上ったのです。修習費用の貸与制が導入されれば、これに約300万円の債務が上乗せされることになるという衝撃的な事実が浮かんできたのです。多くの修習生が多額の借金を負担していること、法律家を目指す人が減少していることなど、給費制廃止を決めた当時は予想していなかったことが、現実に起こってきたのです。

私たち法律家は「権利の守り手」といえ、その仕事の公共性・公益性ゆえに国民が法律家を育てるのであり、給費制は法律家に対し公共心と使命感を求める制度でもあります。今回の運動で、国会議員の間でも次第に理解の輪が広がってきました。この秋の臨時国会で、ぜひとも裁判所法を再度改正して、給費制維持を実現できるよう、会員一人ひとりのパワーで、多くの署名を集めていかなければなりません。ご協力をお願いいたします。署名用紙(PDF形式・506kB)をダウンロードいただきまして、ぜひ、大阪弁護士会役員室もしくは委員会担当室にお持ちくださるようお願い申し上げます。


【ソウル地方弁護士会との交流会】

6月20日から22日までの3日間、正副会長7名と通訳として大阪弁護士会会員である林範夫弁護士の計8名で、ソウル地方弁護士会との交流会に行ってきました。小寺副会長は留守番役を買って出てくれましたが、大量の23条照会決済に苦闘したようでした。

同会との交流会は、平成5年以来、毎年交互に訪問しあってきましたが、昨年は、日程調整がつかず2年ぶりの開催でした。詳しいことは、森本副会長が7月号の月刊大阪弁護士会に記事を載せる予定ですので、それをお読み頂きたいと思いますが、いくつか印象深かかった点を紹介したいと思います。

2日目午前に、ソウル中央地方法院を訪問し、所長とお会いしました。韓国では刑事事件に国民参与制度が採用されていますが、被告人に選択権があり、被告人があまり選択しないので、今年はまだ1件か2件しか開かれていないとのことでした。また、同地方法院では、日本同様、破産部や医療・知財・商事・労働・建築などの専門部のほかに、国際・企業法・広報(マスコミ)・環境・再開発・不動産というような専門部なども有るという話が興味深く感じました。

その後に訪問したソウル中央地方検察庁では、検事長らと会談できました。驚いたのは、ソウルの検察庁ではすでに取調べの全面可視化がなされているということでした。会談後に、取調室を見学させてもらいました。天上に設置されたカメラで部屋全体を録画でき、被調者の顔がわかる角度にマジックミラーで隠されたカメラがあり、パソコン上に投影され、パソコンに事件表示と被調者の氏名、取調官の氏名等を打ち込むと録画が始まる仕組みでした。54の取調室すべてが、可視化対応になっているとの説明もありました。

その後、ソウル地方弁護士会の役員の方々と一緒に昼食をしたのち、同弁護士会館を訪問しました。そこで興味を引いたのは、会館の別館1階に会員向けの託児所が設置されていることで、そこを見学させて頂きました。今のところ13名程度の利用しかなく、運営は大赤字とのことでした。会員の推薦等があれば、弁護士の子供でなくても預かるように規則を改正したものの、経営は大変なようでした。

会館では、ソウル地方弁護士会の会員も混じって、「法科大学院」と「弁護士の専門化」をテーマにしたシンポジウムを行いました。最終日には、ロースクールのひとつである韓国外国語大学法学専門大学院を訪問しました。もともと1学年200名の法学部を廃止し、1学年50人の法科大学院を設置したということですが、国際取引専門の法曹の要請を特色にしているということでした。学費は年間約70万円で、奨学金受給者約43%とのことでしたが、返済義務がないということでした。

隣国で、ある意味で似通った司法制度ですが、これを知ることは、日本の司法を考える上で、非常に参考になりました。

以上