第5回 23条照会の話の続きと、
さて(盛り上がらない話ですが)

平成22年度大阪弁護士会副会長 小寺 史郎

友新会の皆さん、日頃は、委員会活動、嘱託弁護士、弁護士会推薦の関係で大変お世話になり、有難うございます。BBSでは、三木さんのレポートでトリベンが盛り上がっていましたね。皆さん、地下鉄の広告など見られましたか。とある会派の幹事会では、トリベン反対という決議がなされ、三木さんは、8月頃まで、逆風の中、トリベンのために奔走していました。確かに、弁護士会の広報に関心が寄せられるというだけでもありがたいことだと思います。

さて、小寺の方は、担当部署が内部自治関係や、裁判所との協議、立法に対する意見形成などで、三木さんが担当するような弁護士会の法律相談・広告などの弁護士会の事業分野とは異なり、もともと皆様の興味を引くことが少なく、また、内部自治関係などに至っては興味深いが、逆に理事者は口にチャックをしなければならず、抽象的な歯切れが悪い話ばかりとなります。今回も、盛り上がりに欠けますが、23条の話の続きをします。またか…と云わずに最後までお付き合い下さい。


【23条照会について 続き】

23条照会のうち、紛争情報を相手方の生活領域に送ることになる照会は、相手方に対する打撃が大きく、23条決裁でも最も気を遣います。例えば、財産分与請求している妻が夫の勤務先に退職金支給の有無や金額を照会する場合、夫婦が離婚協議しているという情報を夫の職場に伝えることにより、夫の勤務状況に不利となるおそれがあります。こんなときは、予め、夫に対し、退職金支給の有無や金額について質問すると同時に、回答が得られないときは勤務先に23条照会する旨伝えておく、という方法があります。

その他、従来から職場でのトラブルが多い従業員が休職中であるところ、どうも親戚の経営する会社でアルバイトをしているようである、会社側の代理人として、休職中の従業員がアルバイトをしているかどうか調査したい、といった例があります。皆様は、申出の理由をどのように記載されますか。大阪弁護士会の23条照会はいわゆる"副本方式"で、照会事項の他に照会の理由(申出の理由)も照会先に送るため、一方では、照会の必要性を説明するために当該従業員との紛争状態などについて記載しなければならず、かといってそれを詳しく書くと当該従業員の悪性を記載することになり後日問題が生じる、という二律背反状態に陥ることになります(なお、照会事項のみ照会先に送り申出の理由を送らない方法をいわゆる"目録方式"といいます。)。

このようなときは、"上申書"で照会の必要性を詳細に説明し、照会先に送る方の申出の理由は、簡略化する方法があります。例えば、申出の理由には抽象的に"紛議が生じている"など記載し、上申書には、具体的な紛議や交渉状況、照会の結果得られる情報がかくかくしかじかで有益であることなどを記載すれば、審査する側も照会の必要性・相当性の判断がしやすくなるということがあります。

もっともこのような照会は、もともと回答が得られにくいことがあり、かつ、照会先を通じて相手方に照会しているという情報を与えることになるおそれがあることも注意してください。

できるだけ問題が生じないよう役員室一同頑張りますが、申出の理由がもともと事実と異なる、強調点が違う方向に行っている場合などの場合は、審査に微妙な影を落とすことになり、誤った方向に行きかねないことがあります。

皆様方も、この照会を行う意味は何か、照会先に過度の負担をかけないか、照会先から相手方に照会があったことが伝えられるとどのような問題が生じるかなど、当事者の立場とは距離を置いた位置に立って、考えていただければと思います。

23条照会は照会先に回答義務を負わせるもので、弁護士にとって情報を得る大切なツールであります。大切に育てなければ、枯れてしまいます。裁判所の調査嘱託とは違って密行性がある、より幅広く照会をかけることができるなど23条照会には利点があります。

照会の必要性や相当性の判断、23条照会を使わなくても情報を得られる場合の扱い、件数の数え方、回答拒否に対する対応など、23条照会を取り巻く問題は数多くあります。件数も、平成19年度は15、839件、平成21年度は17、801件、平成22年度は9月末現在で9、138件と年間18、000件を超える勢いで、毎年増加しています。その分、事務局・嘱託・副会長の負担が大きくなっています。

23条嘱託の前捌きがあるとはいえ、単年度理事者が決裁することは、年度当初と年度終了時との間で審査の在り方が異なる、副会長間でも審査に差が生じます。かといって、専門機関に任せて、理事者が23条照会に全く関与しないということも弁護士会という組織としては問題です。いわゆる審査漏れがないようにするには何かいい方法がないのか、現在、23条小委員会及び23条嘱託の皆様方と検討しています。

友新会の皆様方から、色々教えていただければ幸いです。


【さて 次々号は】

おそらく三木さんの報告がすぐに出てくることになるでしょう。前回の三木さんのレポートにあった"債務整理事件処理に関する規程問題"は、会員の業務の自由と弁護士会の会員に対する指導監督のあり方について、奥深い問題を投げかけています。

弁護士会の目的を定める弁護士法31条1項は次のように定められています。

弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。

弁護士業務に関する指導監督は、弁護士職務基本規程などがあります。

その他、広告規制、報酬に関する規制、非弁提携の禁止、預かり金の保管方法に関する規制、営利業務に関する届出制など、様々な規制があります。

そして、市民窓口、紛議調停システムがあり、懲戒システムがあります。

"債務整理事件処理に関する規程問題"は新たな規制を行うことを目的としたもので、現実に起こっている問題への処方箋の一つですが、どのような規制がよいのか、色々考えさせられました。


さて、次々号ですが、私の引出しが増えてきました。会員への規制という面では懲戒などの話が、会員への業務支援(事務の改善進歩 31条)という面では研修・今後の法律相談の話など、また、ちょっと変わったところでは会長・副会長の役割の話も可能です。裁判所との協議などについての話も、これから各種協議会が何度も開かれますので、このことについてもお話できるのではないかと思っています。

大空を羽ばたくトリベンのように、できるだけ全体像を見渡せる高いところから話題を提供したいと思います。ご希望があれば、BBSへの記載や直接の連絡をお願いします。


最後まで、お付き合いありがとうございました。


以上