第8回 法曹人口政策会議とレターケース問題

大阪弁護士会 副会長 三木 秀夫

師走も押し詰まり、弁護士会館も、仕事納めの日も近づいてきました。年明け早々には、5日に大阪弁護士会の新年祝賀会と先進者顕彰会があり、役員立候補届出等の一連のスケジュールが始まります。その後には、次年度役員への引継ぎへと進んでいきますが、会務の締めくくりの作業も多くあり、忙しくなってくるものと思います。


■日弁連の法曹人口政策会議

師走の15日、最高裁は、新63期司法修習生の2回試験で1949人が合格(不合格者90人)したと発表しました。その後の弁護士登録で、弁護士数が初めて3万人を超えることとなりました。

その直後、2日間にわたる日弁連理事会の翌日、12月18日(土)に、法曹人口政策会議の第2回全体会議が開かれました。場所は、東京四谷の主婦会館です。今回は、これまでの議論をもとに事務局で作られた「中間取りまとめ案」が出されて議論がなされました。

この「法曹人口政策会議」は、本年6月に理事会の承認のもとで立ち上がったもので、設置期限は宇都宮執行部の任期である2012年3月末日までです。法曹人口に関する基本政策について世論の理解及び支持を得るために、法的ニーズの問題や法科大学院の問題、質という観点からの司法修習の問題、法曹養成の問題、その他あらゆる問題を検討しています。会長(議長)、副会長、理事に加え、各弁連から4人ずつ推薦された32人の委員と会長指名委員の合計140人で構成されています。

大阪弁護士会からの参加者は、私のほか、金子武嗣(日弁副会長)、石田法子・山口孝司(日弁連常務理事)、中本和洋(日弁連理事)、正木みどり・谷英樹・坂野真一会員(敬称略)の計8名です。

8月の第1回全体会議以降、月1回の運営会議(理事以外の委員などで構成)、毎月の理事会における意見交換がなされてきました。第2回全体会議のこの日は、この「中間取りまとめ案」をもとに意見交換が活発になされました。当面の緊急対策としての合格者の相当数減員と、適正な合格者数と将来法曹人口数について市民や関係者の意見も聞きながら運動を進めていくという内容を骨子としています。今後は「中間取りまとめ案」をたたき台にして、来年以降の運営委員会と理事会、そして2月19日の全体会議を経て、3月の理事会において、中間報告書が取りまとめられる予定です。ぜひ、ご意見等を、お寄せくだされば幸いです。


■修習生費用給費制維持について

前回、小寺さんからご報告がありましたように、給費制が何とか1年延長するとの法案が成立しました。友新会の皆様からも多大なご協力いただき、誠にありがとうございました。ただし延長ですので、何もしないと、1年後には貸与制になってしまいます。今後は、対策本部の継続と今後の目的の明確化、給費制維持のために立ち上がった市民連絡会やビギナーズネット(給費制維持のための法科大学院生・修了生・司法修習生・若手法律家のネットワーク)と連携をとってのさらなる運動が必要です。また、衆議院法務委員会で採択された、今後1年間で司法修習生に対する経済的支援の在り方について政府と最高裁判所に検討するよう求める旨の決議に沿った国レベルの検討機関設置、運動に冷淡であった全国紙や法科大学院の理解獲得のための活動等が、これからの大きく喫緊の課題です。さらなる皆様のご支援をお願いします。


■新64期司法修習生への援助金貸付実施

給費制が1年間延長はされたものの、それこそ「駅を走り抜けようとしていた特急列車を止めて引き戻したような(金子会長の表現)」、まさに貸与制実施直前での変更であったために、最高裁の支給事務手続きのために、12月給与が1月になってしまうことになり、年を越せない修習生が出かねない事態となりました。このため、12月16日の日弁連理事会において、緊急対策として、日弁連が希望修習生に対して一人20万円を限度に貸与するための実施要綱が承認されました。12月21日までの期限で受け付け、27日までに送金することとなりました。何とか、特に冷え込むこの正月を乗り切ってもらいたいものです。


■レターケースの不足化とバーチャル化試案

12月の大阪弁護士会のメールマガジンをご覧ください。上原副会長が、レターケースの問題に触れています。

会館の地下1階のレターケースの最大容量は5000で、すでに3600が使用され、さらに毎年170名程度の増加が見込まれます。このペースだと7年後頃には満杯になると試算しています。一方で、事務所所在地の拡散化と企業内弁護士の増加、環境保護・ペーパーレスの推進の流れなどで、レターケースでの情報伝達が今のままでいいのかの議論も出てきています。

こういったことから、I T 技術の進歩にあわせて、レターケース機能のバーチャル化の試案が出てきつつあります。「バーチャルレターケース」というものを、大阪弁護士会ホームページの会員ページにリンクを張るかたちで設置しようというものです。

え!レターケースがなくなるの!?という声が出てきそうですが、仮にそうなった場合でも、当初の間は、現在のレターケースと併存させながらの段階施行というようなことも考えつつあるところです。近未来の弁護士業務を考える一歩になるかもしれません。

以上