第4回 北摂地域法律相談所を開設します

大阪弁護士会 副会長 三木 秀夫

役員室での生活にもかなり馴染んできたこの頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。先日は、若手会の皆様方が役員室訪問に来られ、金子会長や小寺副会長とともに歓談させて頂きました。担当する委員会でも友新会の方々が活躍されていて、大いに助けて頂いています。友新会に支えられて役員を務めさせて頂いていることを、日々実感する毎日です。

今回は、日弁連マターですが若手にとって重要な2つの問題と、大弁の法律相談センターの最新情報をお送りします。


【債務整理事件処理に関する規程問題】

日弁連は、みなさんの会費や弁護士活動に直結する課題を多く抱えています。

まずは、債務整理事件処理に関する規程案が、現在、各単位会に意見照会がなされています。ご存じのように、一部の法律事務所がテレビなどを通じて大々的にCMを打ち、電話を掛けてきた相談者には面談せず受任するなどの現状があります。これに対して、「生活救済よりビジネス優先」との批判がありました。このため、日弁連は昨年7月に、依頼者と直接面談してその意向を尊重するように求める指針を作り、今年3月からは「直接面談」を「直接かつ個別の面談」、広告についても「弁護士費用や受任の際の直接面談を表示するよう努める」とトーンを強めていました。しかし、最近は依頼者とのトラブルも目立つようになり、金融庁までが対応を求めていました。

このため、日弁連は、単なる「努力目標」ではなくて、規則での義務化をする方針を固めました。今年度内の臨時総会で承認を求めたいようです。

従前の指針に対してさえ、東京のある事務所は、「事実上業務を束縛し、自由競争の機会を奪っている」と強く反発し、公取委への働きかけをしています。今回は懲戒対象にもなる規則化を行うわけですから、さらなる反発は必至です。債務者救済に取り組んできた会員の多くは、ビジネス優先への規制は仕方がないとの空気はありますが、独禁法へ懸念は注意が必要です。

今回、日弁連が示した案はA案とB案の2つがあります。両案は、いずれも依頼者との直接・個別面談等を義務化する行為規制や、一定の広告規制を入れる点では共通していますが、A案では、さらに過払い金報酬の上限を25%としたり、その他の報酬上限を定めている点です。なぜ25%かと言えば、東京三会の法律相談センターの債務整理基準の上限がそうなっていることからのようです。しかし、大阪のそれが20%であることとの対比や、そもそも25%を上限として明記したら、その上限に張り付く動きが起こりうることがありうるという点が、独禁違反につながるとも指摘されています。みなさんは、どう考えますか。


【特別会費の問題】

もう一つ、日弁連が今年度内の臨時総会で承認を考えている問題があります。

少年・刑事特別会費の月1100円増額と、その他7法律援助事業のための基金の財源に充てる特別会費を新たに設けて月額1300円を徴収するという案です。

その理由は、日弁連が法テラスに委託している法律援助事業について、事業活動に充てられる贖罪寄付金や償還金が減少する一方で、実際の対象事件が想定以上に増加していることによる財源難を補うためです。この点については、既に各弁護士会に意見照会が実施され、当会としても、関係委員会に意見を求めた上で、いずれも「やむをえない」という回答をしました。

全ての被疑者に弁護人が付されること、少年の身体拘束事件の全面的国選付添人制度を実現させることは、日弁連の一貫した方向性です。今ある少年・刑事財政基金は、その実現に至るまでの間、維持を図らなければなりません。苦労してこれを引き受けている会員に対する報酬を、財源難のために減額または廃止するのは避けたいところです。

その他の7つの援助事業とは、犯罪被害者、難民認定、外国人、子ども、精神障害者及び心神喪失者等医療観察法、高齢者、障害者及びホームレスへの7種の援助事業を言います。これらは全て社会的弱者の権利と生活を守るために極めて重要な機能を果たしています。本来は法テラスの本来事業としないとならないものばかりです。そのための運動を行っているところですが、これら事業の必要性を訴えるために、事業を継続していく必要があります。

しかし、弁護士会の会費は既に高いため、さらなる値上げは避けたいところです。特に若手を中心に、経済的不安を覚える会員が多くいる中では慎重でなければなりません。仮に増額がやむを得ないとしても、並行して、贖罪寄付を増やす努力をする必要があります。さらには、これら法律援助事業を、法テラスの本来事業とするための運動に関心を持って頂いて、その運動強化に力を貸してくださる必要があります。

この問題も、日弁連は今年度内の臨時総会で承認を求める方向で準備が進められていますが、ぜひ、議論を尽くしていく必要があると思います。


【千里法律相談センターの閉鎖と北摂地域法律相談所】

今年の12月末をもって千里法律相談センターを閉鎖することにしました。このセンターは、今から約2年半前に開設したものですが、予想に反して相談者数が伸びず、他のセンターと比較して賃料や人件費等の固定経費負担が大きくなりすぎていたからです。

このセンターは閉鎖をしますが、今後は、固定経費を可能な限り減らす新たな発想でのサテライトを構築したいと思っています。これによって、担当弁護士の受任機会の増大を図りたいと考えています。

まず、最初に手掛けているのは、千里センターに替わるものとして、この11月から試験的に5ヵ所でスタートする「北摂地域法律相談所」です。池田NPOセンター(池田駅)、吹田文化振興財団(吹田駅)、茨木文化振興財団(茨木市駅)、高槻市商工会議所(JR高槻駅)、健康の森(千里線山田駅)の5ヵ所で、それぞれ相談日に限って相談室を確保し、週一回かもしくは月2回の相談を実施するべく準備を進めています。ただ、これらは基本的に可能な限り職員派遣を避けるためと、試験実施として進めるという観点から、一般無料法律相談としてみたいと考えています。この中の、池田NPOセンターは、私自身が以前から関わってきたところで、NPO支援という市民密着の各種支援活動に関わってきたセンター機能を持っていますので、その特徴を生かして、弁護士会ともっと幅の広い提携の可能性を模索したいと思っているところです。

さらに、もう一つのアイディアも膨らませているところです。これはまだ公表できる状態になっていませんが、分かりやすく言えば、法律事務所の少ない府下の地域で新たに事務所を構えようとする会員に対して、弁護士会が一定の援助を行うとともに、その事務所に一定程度の「弁護士会法律相談センター機能」を持ってもらうという発想です。例えば、そこの事務所から一定曜日に相談スペースの提供を受けて会から相談担当会員を派遣するのですが、予約受付は会がするものの、会場受付等の対応をそこの事務所に委託するという形態などを模索しています。具体的には解決すべき課題は多数あるとは思いますが、新たな発想での軽費型サテライトになるのではないかと考えています。


【トリベン騒動】

最後にトリベンについて。法律相談センターの広報戦略として、「トリベン」キャラクターを使いました。読売新聞と朝日新聞への広告と、地下鉄での扉ステッカーです。

これについては、企画段階で賛否両論が、多数渦巻きました。どちらかというと否定論が多かたと認識はしています。正直言って、担当役員の私は、サンドバッグ状態でした。しかし、過去に法律相談センターの広報が、これほど話題になったことがあったでしょうか。例えば、昨年度までの広告がどういうものであったかを語れる方がどれほどおられるでしょうか。反対論は述べても、広告のあるべき具体論はあまり耳には入ってこなかったように思っています。他の案も候補には上がりましたが、いずれもインパクトの点で見劣りがしたり、大手で企画費用が高額にも関わらず既使用の図柄を流用した提案であったこともありました。

この広告についてはご意見も多々あろうかとは思いますが、同じ広告料を掛けるならば、インパクトの量という視点でも見て頂ければありがたいなと思っています。

以上