第10回 相談センター担当役員の苦虫記

大阪弁護士会 副会長 三木 秀夫

■自治体相談について

当会は、皆様のご協力を頂いて、大阪府下の多くの自治体等との間で委託を受けて相談センターに登録を受けた会員の方に、法律相談の担当者として行って頂き、日当をお支払いさせて頂いています。中には、連絡票を活用して頂いて、受任に至っていることもあるかと思います。

このように、大半の方々は、問題なく法律相談を終えて頂いていて、自治体等から感謝されています。ところが、自治体等の相談窓口担当者から、担当弁護士名を明記したクレーム(指導改善の申し入れ)も送られてきます。これが届けば、担当副会長の私のところに報告が回ってきます。実は、これを見ないような週はありません。必ず何人かの報告が来る状態です。友新会員のお名前を拝見した際に、その方の顔を思い出しながら苦虫を噛んでいる私がいます。


■クレームの内容

最も多いのは、遅刻です。1分程度のものから、10分、30分、中には1時間以上も遅刻するというようなケースがあります。さらには、担当日を完全に失念していたケースもあって、法律相談センターの職員はもちろん、センター運営委員会や、担当の副会長である私にしてみたら、悩みの種となっています。センターからは、担当日・場所が決まった時点で通知をしているだけでなく、担当日が近づいてきたら、再確認のFAXをさせて頂いているにもかかわらずです。


■文句を言われて当然です

言うまでもなく、自治体等の法律相談は、市民サービスの一環として行われているもので、市民にとってみれば無料ではありますが、当会は自治体等から委託料を頂いております。すなわち、自治体等の側からすると有料で委託をしているわけですから、当然に時間通りに来て(むしろ5分前には着席して)、時刻通り法律相談というサービス提供をして当然なわけです。自治体等の相談窓口には、相談予約者が早くから来訪して待っておられるわけで、そこに時間通りに弁護士が来ないと、自治体窓口の担当者自身が、待っておられる市民の方に謝罪をされています。中には怒鳴りつけられるような場合もあると聞いています。


■弁明をして頂いています

クレームについては、役員室を経由して法律相談センター運営委員会の改善部会にかかり、まずは当該会員に対して弁明書を出して頂いています。そのうえで、必要に応じて改善部会員からヒアリングも行ったりしています。

遅刻の原因の中には、電車が遅延したとかのやむをえない理由の場合もありますが、大半は、相談会場までの所要時間を読み間違った、電車に乗り遅れた、乗り間違えた、降り間違えた、前の裁判が長引いた、手帳に記入を間違えたなど、自己の時間管理、日程管理、往路確認管理のミスです。

ところが、担当して頂いている会員の皆様方の中には、そういったことの認識が薄い方が結構おられるようです。もしかしたら、「法律相談に行ってやっている」という認識を持っているのではないかと、疑いたくなるような場合もあります。1分でも遅刻は遅刻です。できたら、5分前にはスタンバイするくらいの気持ちで臨んで頂きたいものです。自治体の方々との懇談会で、「それが社会常識ですよね」とか、「弁護士会から、ちゃんと遅れないように指導してください」と言われると、本当に恥ずかしい思いをいたします。

現在、無断欠席をしたときは又は遅刻を一年以内に三回以上したときは、センター運営委員会の議を経て、相談担当者名簿からの登録拒否、抹消等をすることにしています。くれぐれも、こういったことにならないよう、ご注意をよろしくお願いいたします。


■不遜な態度?

相談者から、相談後に自治体等の担当者にクレームがあって、それが当会に報告されることも多くあります。こういたケースで一番多いのが、相談における態度についてです。相談における態度が横柄であるとか、一方的に話をするばかりで相談者の話を聞いてくれない等の苦情があとを絶ちません。この中には、相談者側に問題があるのではないかと思われるケースがありますが、会員に問題があるというケースも多々あります。言うまでもなく、法律相談においては、相談者の立場になって、親身に話を聞く態度が大切ですので、この点も十分ご留意していただきますようお願いします。


■パソコンではなく顔を見てください!

こういったクレームの中で、最近、よく目立つようになってきたものに、法律相談中のパソコンの使用についてです。相談者が一生懸命に説明をしても、弁護士がノートパソコンの画面ばかり見て、相談者の顔をほとんど見ずに回答をすると、たいていの方は不満足感を持たれていると思います。当会としては、相談中のパソコンの利用は原則禁止とさせていただいています。相談に関連する情報を入手するためなどでは例外的に認めますが、その場合でも、必ず相談者にその旨を事前に伝えたうえで使用されるようにお願いいたします。


■市民のために、会のために、自分のために

遅刻、欠席は問題外ですが、それ以外のクレームの中には、言われた方にとって、納得のいかない場合もあるかもしれません。しかし、クレームは相談に臨む自分の姿勢を映す鏡のようなものではないでしょうか。相談者が納得されなかったのは、自分の説明スキルが、まだまだ未熟であったと考えてみてもいいのでは。そうしながら、相談対応能力を高めることは、市民のためであり、会のためでもありますが、何をおいても、皆様ご自身のためであると思いますが、いかがでしょうか。

以上