第7回 おかげさまで給費制は1年間維持されました/基本のおさらいです

平成22年度大阪弁護士会副会長 小寺 史郎

冬を迎え、そろそろ来年度に関する話などが出始める頃となりました。主な行事であった11月19日の和歌山での第26回近弁連人権擁護大会、同月26日の第73回民事介入暴力対策埼玉大会もそれぞれ無事終了しました。あとは、12月14日の日弁連国選シンポ(於京都)がありますので、ご参加よろしくお願いします。


【給費制維持運動】

おかげさまで、11月26日、今後1年間、司法修習生に対する貸与制の施行を延期する旨の裁判所法の改正が国会で可決され即日公布されました。これにより、新64期司法修習生に対しても給費制が維持されることになりました。ただし、今後1年間の間に、法曹の養成に関する制度の在り方全体について速かに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずることとされており(附帯決議2項)、今後1年間でどのようなことができるのか、殊に、国会や政府、報道関係者の一部から「すべての法曹が公共的な職務を遂行しているといえるのか」「経済的に困難な者に対する支援はもっともだが、経済的に裕福な者に対してまで給費する必要性があるのか」といった問いかけを受けており、まだまだ状況は厳しいものがあります。

給費制の維持の問題を通じて、我々法曹の職務は社会に対する奉仕を旨とし、他人のためのものであることを再度確認させられました。
なお、友新会からは、尾川会員を始め数多くの皆様方にご協力いただきました。有難うございました。金子大弁会長は、日弁の担当副会長で10月はほとんど大阪にはおられず、端から見て本当に大変だと思いました。


【基本のおさらい】

弁護士でない方から、大阪弁護士会の役員って、何なの、と問われると、なかなか的確には説明できません。そこで、次のように云えば、何となくイメージを持っていただくことができのではないかと思っています。

年間売上約18億、職員数約100名、株主約3600名の株式会社の取締役みたいなもので、会社の事業内容は、弁護士(法人を含む)の使命や職務から、品位を保持し、弁護士職務の改善進歩を図るため、弁護士(法人を含む)の指導、連絡及び監督に関することをしています(弁護士法31条1項)。

しかし、以上の話は、強制加入制度と弁護士自治の話や、弁護士会の公務所的性格は抜けており、不十分なところがあります。そこで、基本のおさらいを以下してみたいと思いますので、お付き合い下さい。

  1. 日本弁護士連合会
    日本弁護士連合会は、弁護士、弁護士法人の外、弁護士会をもって組織されています。総会、代議員会があります。総会の議決権は弁護士と弁護士会が持っており、弁護士法人は持っておりません。代議員会は、総会に付する事項の審議や、副会長・理事・監事の選任等を審議しますが、総会に付する事項の審議を代議員会が行うこととなると、議案確定は総会の6か月前に要します。このようにタイムスケジュールがきついため、総会に付する事項をその権限から省くようにする予定です。
    その他、理事会・常務理事会で、運営に関する事項等広範な事項が審議されています。三木さんの前回報告は理事会の模様です。
    日弁連会費は月額1万4000円で、その他、少年・刑事特別会費3100円、過疎偏在会費700円があります(合計1万7800円)。本来、国が法律援助事業として行うべきと思われる事業に日弁連は支出しており、もっと世間にアピールすべきでしょう。なお、2月9日の日弁連臨時総会で、少年・刑事特別会費について1100円の増額(計4200円)となり、その他の7援助事業の財源に充てるために新たに月額1300円が徴収されることになります。期間は平成23年4月から平成26年5月までです。
    なんで?とお思いの方もいらっしゃるのでは。
  2. 近畿弁護士会連合会
    会員は大阪高等裁判所管内の弁護士会です。それで近畿弁護士「会」連合会といいます。恥ずかしながら、副会長になるまで理解できておりませんでした。1年間の会費は、各管内の弁護士会が毎年4月1日現在の会員数×5000円で算出されます。
  3. 大阪弁護士会
    組織的には、総会、役員、常議員会、委員会で構成されています。
    総会の審議事項は、予算議決・決算承認、会則・会規の制定・改廃等です。
    常議員会は、60名の会員で構成され、弁護士名簿の登録請求等の進達、規則の制定・改廃、総会による付議事項、会費の減免、意見書の承認、特別委員会の設置・改廃、委員会委員の選任など重要な事項を扱っています。
    皆様がおなじみの委員会についてですが、弁護士法に基づく常設委員会は3つ(資格・綱紀・懲戒)で、会則に基づく常設委員会は24、総会・常議員会に基づく特別委員会は31の合計58委員会があります。委員会は、調査・研究・諮問機関で執行機関ではありません。弁護士会の組織上、対外的な執行はすべて会長がこれにあたります。人権救済申告事件にかかる勧告書・要望書や、法72条等問題委員会の非弁調査案件にかかる告発書・警告書は、委員会の調査報告に基づき、正副会長会の議を経て、会長が執行しています。
    この他、協議会・プロジェクトチームがあり、部門別の会議もあります。企画調査室、法規室、人権救済調査室など会則により設置された室があります。
    弁護士会の事業活動として、総合法律相談センター、高齢者・障害者総合支援センター(ひまわり)、遺言・相続センター、総合紛争解決センター、大阪住宅紛争審査会などがあります。高校生に対する法教育も事業活動の一つです
    財政的には、平成21年度の収入が約18億2400万円で、その内訳は、一般会費が6億2千万円(34%)、会館特別会費が2億6千万円(14%)、負担金会費が6億8千万円(37%)です。負担金会費のうち3億1千万円が破産管財人等からのもので、負担金会費がないと財政的にはもたない構造となっています。破産管財人の負担金会費は、友新会の100周年誌にも掲載しましたように、昭和の初めの金融恐慌の際、銀行破産事件に絡み、債権者である預金者の保護、当時預金保険機構はなく、破産配当の対象となる預金債権について、無償あるいは低額の売買など様々な者が跳梁跋扈し預金者の利益を害したため、大阪弁護士会の会員が無償で債権届出手続を行った(裁判所も奨励したそうです)ことから、破産管財人はその報酬の一定割合を会館建設のための会費として拠出されたという歴史的な経緯があります。また、裁判所との信頼関係もこのようなことがあって構築されたと云われています。

さて、余談が過ぎました。お読みの皆様もお疲れでしょう。次は、会と会員の関係などを掲載しながら、トピックな話題の位置づけを考えたいと思います。
お付き合い有難うございました。

以上