第6回 「外国人法律相談」を始めます

大阪弁護士会 副会長 三木 秀夫

秋も深まり、行事が目白押しです。10月7日~8日は岩手県盛岡で第53回日弁連人権擁護大会、17日には大弁の第36回大運動会でした。23日には日弁連の貧困対策全国キャラバン第一弾として、大弁主催で貧困・生活再建問題対策本部設立記念シンポ「貧困と闘う!」が開かれました。11月19日には和歌山での第26回近弁連人権擁護大会が開かれます。ぜひ、皆様の参加をお願いします。


■給費制維持運動

残念なことですが、10月末段階では貸与制施行を阻止できない事態になりました。全国での請願署名数が、目標20万人を大幅に超える3倍もの数が集まり、国会に提出するなどの大きなうねりとなっていました。議員との折衝も進み、与党民主党や公明党等が支持する方向を示し、制度継続に向けた議員立法がなされる動きとなっていました。残った自民党も大半の議員は賛意を示していましたが、10月22日の法務部会で、一部議員からの反対意見で結局まとまらず、与野党合意による委員会審議なしでの本会議採決が困難になり、期限までの成立が不可能になった次第です。あと一歩のことでした。しかし、なお貸与開始までの残る期間に給費制に戻す法改正を目指して運動を行います。さらなるご支援をお願いします。


■日弁連理事会の様子

毎月、2日間にわたって行われる日弁連理事会に、理事の一員として出席しています。理事会が開催される場所は、東京地裁と背中合わせに、日比谷公園に面して建っている弁護士会館の最上階(17階)の会議室で行われます。3部屋の壁を取り除いた横長の部屋の奥側に執行部席が二列に並び、前列の真中に宇都宮健児会長と海渡雄一事務総長が座り、その左右に13名の副会長がずらっと座っています。後列には6名の事務次長や調査室長、嘱託が控えています。これに対面する形で理事71名が扇状に座っています。北は旭川から南は沖縄までの全国単位会から出席しています。大阪からは4名です。初日は午前10時45分から午後5時過ぎまで、翌日は午前10時から午後4時過ぎまで、みっちりと多数の議案が審理されます。今年の日弁連は、法曹人口、法律扶助事業財源、債務整理処理を巡る規律化等、意見の大きく分かれる問題を抱え、重要な意見書も多くあり、ときに大激論が交わされています。また、司法修習生給費制維持や、貧困問題対策、取調可視化などの問題では、一致協力して請願行動を共にするなど、「頭も体も動かす理事会」という印象です。


■外国人法律相談の開始

  1. 来年早々に、当会の総合法律相談センターで「外国人法律相談」をスタートさせるべく準備しています。人権擁護委員会とのコラボで実現に近付けてきました。必要となるセンター業務規則の改正を近く常議員会にご審議頂く予定です。
    もともと、当会では、在留期間徒過や在留資格外活動に伴う賃金未払い、外国人差別、退去強制問題等、外国人への人権問題への救済を図るために、人権擁護委員会による電話相談が運営されてきました。平成19年度からは、入国管理局による収容者からの要請に応じる出張相談も開始されました。
    しかし、在住外国人が日常生活で抱える一般的な法律問題を対象とした来館法律相談は、これまで実施されていませんでした。ところが、グローバル化の進展により、ビジネスや留学などの目的で来日し、大阪で生活する外国人の方々が急激に増えています。その方々は日本人と同じように様々な法律問題(消費者、債務、賃貸借、結婚、離婚、相続問題等)に直面することが増加しています。このため、弁護士に相談する必要性が高いにも関わらず弁護士相談の提供が十分とは言えませんでした。
    大阪では、私が役員を務める(財)大阪国際交流センターで、当会から派遣を受けて法律相談を行っています。そこには多数の外国人が相談に来ています。全国的には、東京三会、埼玉、横浜、愛知県、福岡県等の弁護士会では、すでに外国人相談を実施しています。大阪府の外国人登録件数は全国屈指でもあります。こういったことから、当会においても「外国人法律相談」を実施する必要性があると判断し、開始に向けた準備を進めてきた次第です。
  2. 体制づくり
    弁護士からすると、外国人法律相談は、場合によっては在留資格や準拠法に関する知職が必要な場合もあり、また通訳が必要となる場合も少なくありません。そのため通常の相談とは異なる体制を組む必要がありました。
    法テラスでは、昨年4月から、日本語を話せない外国人の法律相談に無料で通訳を付する制度を開姶しました。このため、当会で行う「外国人法律相談」を法テラスの相談場所としての指定を受け、法テラスとの連携をはかるべく協議をしています。法テラスの資力要件と在留資格要件を具備する者については法テラス相談として扱い、そうでない外国人については当会の有料相談として実施するという枠組で進めています。また、通訳人の手配の簡素化や合理化も図れるように相談体制を構築しつつあります。
    最大の課題は、最初の予約受付ですが、一般の相談予約と同じく、当会のコールセンターで受け付けます。簡単な対応マニュアルを備え付け、来館相談日の予約を受け、指定日に来館して頂いて相談を実施します。相談時に通訳が必要と判断したときは、事前に手配をします。従いまして、相談を担当して頂く際には、言語の心配はありません。予想としては、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン語、ポルトガル語、英語が多いものと予想していますが、これ以外の言語の対応は、これからの課題と思っています。
    この外国人相談は、大阪の多文化共生社会化の一助になると信じるとともに、これからの弁護士としての業務拡大にもつながるものと思います。ぜひ、皆様のご参加とご協力をお願いいたします。
    1. 以上