第5弾!! 犯罪被害者の刑事訴訟参加制度の法律案について考える

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

犯罪被害者の刑事訴訟参加制度に関する法律案が国会で審議されようとしています。

このような状況下で、2007年4月28日、大阪弁護士会館において「犯罪被害者と司法を考えるシンポジウム─被害者の刑事訴訟参加の問題点と今求められる被害者支援の課題―」のテーマでシンポジウムが開催されました。

このシンポジウムでは、犯罪によって被害を被った人に対して、犯罪を被った直後から支援をすることの必要性はあるが、今回の法律案のような刑事訴訟参加手続は、次の点で問題がある旨指摘がなされました。

【本法案の問題点】

  1. 法廷に被害者や遺族の報復感情が持ち込まれ、報復の連鎖が復活するおそれがある。
  2. 被告人が萎縮又は圧迫感により自由な弁論や反論ができなくなるおそれがある。
  3. 2009年から実施される裁判員裁判が円滑に機能しなくなるおそれがある。

確かに、下記の内容を持つ法律案の中味を検討すると、刑事訴訟が私刑(リンチ)を認めず国家による刑事罰を出発点としていることに逆行し、特に、裁判員裁判制度の実施(裁判員が事実認定及び量刑の決定に参加すること)を考えると、裁判員が被害者の立ち居振る舞いに著しく影響され、公平な量刑の決定がなされるか問題があります。

このような問題点を含む本法案については、この問題点の解消に向け慎重な審議が国会でなされることが望まれます。

【本法案の概要】

1)この手続きに参加できる人

参加できる人は、被害者、被害者が死亡又は心身に重大な支障がある場合における配偶者、直系の親族、兄弟姉妹です。

2)参加できる被告事件の種類

被告事件の種類は故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、業務上過失致死傷等の罪(交通事故など)、逮捕監禁の罪、略取、誘拐及び人身売買の罪です。

3)上記 1)の参加人とその代理人弁護士ができる訴訟活動は、

  1. 公判期日への出席(検察官の側に着席する)
  2. 証人尋問のうち、情状事項に関する反対尋問
  3. 被告人質問(質問事項に制限はない)
  4. 事実及び法律の適用に関する意見陳述
    (求刑を含む。ただし、訴因の範囲内)

などです。

以上