第19弾!! 司法修習生の弁護士事務所への就職問題

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

1 司法修習生の弁護士事務所への就職が難しい

9月13日司法試験の合格発表がありました。これは、全て法科大学院を卒業した人で1,851人が合格しました。

また、最近、新聞報道(9月15日付日経新聞朝刊)で、「日弁連が法曹人口の拡大で司法修習生に就職窓口を設置した。日弁連がこうした就職対策に乗り出すのは初めて。」と報道されています。


2 何故、就職が問題になるのでしょうか

弁護士になることを希望する司法修習生の就職が、新聞で報道されるくらい問題になるのはどうしてなのでしょうか。司法試験に合格して司法修習を終えれば、弁護士になる資格はできます。そうすると、何も法律事務所に就職せずに、自ら事務所を開業すればよいのではないかと思われる方々もいるかもしれません。

しかし、将来、自ら事務所を開業するにしても、法律事務所に就職してon the job trainingをすることは、弁護士の資質を向上する上で重要な意味を持ちます。たとえば、今回の司法試験合格者の例をとると、法科大学院(2年乃至3年)→司法試験合格→司法修習(1年)の過程を経て弁護士になります。皆さんが仕事を依頼する場合、この過程を経てきただけで、一般的に社会経験の少ない弁護士に仕事を依頼されますか。やはり一定の実務経験を経た弁護士がいれば、その弁護士に依頼されるのではないでしょうか。

このことは、就職してon the job trainingをすることで弁護士としての資質が向上し、法的サービスを必要としている人の信頼を獲得しているといえるのではないでしょうか。

就職すれば、先輩弁護士が生の仕事を通して直接指導するなどしてon the job trainingの中で弁護士としての資質を向上させることができるのです。


3 法曹養成の一環として就職をとらえる必要がある

司法修習の期間は、私達が弁護士になった当時は2年間でしたが、最近は1年が主流 です。また、法科大学院は司法修習の前期修習の段階までの教育が終了している前提で制度設計されている結果、司法修習の期間も短くなったのですが、実際は、その制度設計どおりにはなっていないのが現状です。

この現状を考えると、法律事務所に就職してon the job trainingをすることは、従前にもまして、弁護士としての資質を向上させるための重要な機会の一つとして考えられるようになっています。

司法試験合格者の増大により大量に弁護士が増加する状況下で、大阪弁護士会においは、弁護士希望の司法修習生が誰でも法律事務所に就職しon the job trainingを受けられるよう色々な活動をしています。この活動の一つが、8月20日付産経新聞一面で照会されています。また、仮に就職できなかった人に対しても、弁護士としての資質の向上のために、大阪弁護士会としてどのようなことができるのかを検討しています。

しかしながら、大阪弁護士会が就職できなかった人に対して、弁護士としての資質向上のためにできることには限界があります。つまり、色々な生の仕事を通して直接指導をするなどということは、就職してこそできるといえるからです。

今、就職問題については、法曹養成の一環としてとらえて、弁護士が大量に増加する中で今の現状をどうするのかを真剣に検討し、将来に向けて有効な手を打つ必要があると考えます。

以上