第16弾!! 弁護士の質を考える

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

1 弁護士の大量増員時代

現在は、一年間に約2,000人以上が司法試験に合格し、その内、9割強が弁護士に登録することになります。私が弁護士になった当時は、今から約25年前ですが、約三百数十名が弁護士になったにすぎません。

このように弁護士の数は、私達が弁護士になった時代と比べものにならないほどのスピードで増加しています。


2 法曹養成システムの変遷

さて、このような状況下で、弁護士・裁判官・検事を養成する法曹養成のシステムは、2004年から大きく変わりました。今の新法曹養成システムは、法科大学院を中心としたものになっています。つまり、2~3年の間、法科大学院で教育を受けた者が新司法試験を受けて合格した後、1年間の司法修習を終了し、法曹になるというシステムです。

私が弁護士になった当時の旧法曹養成システムは、法科大学院という制度はなく、司法試験に合格した者が2年間(その後1年6ヵ月、1年4ヶ月となった)の司法修習を終了した後に、弁護士となるというシステムでした。この旧法曹養成システムでは、下図を見て頂いたら分かるように、修習期間の点もさることながら実務修習に備えた能力を取得させる前期修習があった点です。

前期講習

新法曹養成システムは、この前期修習までを法科大学院で終了させるという前提でできたシステムですので、前期修習が廃止となり、修習生は即実務修習に入り、8ヶ月の実務修習終了後、2ヶ月の選択修習と2ヶ月間の後期修習(集合修習)を行うことが基本となっています。

後期講習

しかしながら、実際は、法科大学院の教育が前期修習までの課程を終えるという目的を果たしていないという実情があります。これは、法科大学院を中心とした新法曹養成システムの重大な欠陥であると考えます。


3 弁護士会の努力

大阪弁護士会では、このような欠陥を補充する意味で、他の弁護士会に先駆け次の二つのことをしようとしています。

  1. 司法試験合格者で司法修習に入る前の人たちに対する事前研修
  2. 実務修習についた司法修習生に対する冒頭修習

この事前修習及び冒頭修習は、本来なら法科大学院が担うべきであったものを補完しようとする制度です。本来の制度設計からすると、弁護士会がこのような役割を担わなければならないこと自体おかしいといわざるを得ません。

しかしながら、大阪弁護士会は、弁護士の質が低下することによって弁護士を利用する人々に迷惑がかからないようにするための方策の一つとして努力しているのです。これは対処療法的なものであり、根治療法としては、法科大学院制度、新司法試験制度や司法修習制度の改善策を検討する必要があると考えます。


※補足
司法試験合格者数や司法修習制度の変遷については、このホームページの「法曹界の2007年問題」の中の「法曹人口問題-基礎知識編-」で詳しい説明をアップしていますので、合わせてご覧下さい。

以上