第12弾!! 弁護士に対する需要をどう考えるか

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

1 面白い数字があります。下の表1、2は、弁護士一人当たりの新受件数や法律相談件数 を見たものです(この数字は2007年4月14日に大阪で開催された司法シンポ・プレシンポでの数字です)。表1の新受件数について説明すると、例えば「大阪本庁」の欄は、大阪地裁本庁の1年間の新受件数(民事訴訟事件、破産事件、再生事件、刑事事件)を大阪地裁本庁管轄下の弁護士数で割った数字を求めたものです。また、表2の法律相談について説明すると、例えば「大阪簡裁」の欄は、大阪簡裁管轄区域内の自治体の1年間の相談件数を大阪簡裁管轄下の弁護士数で割った数字を求めたものです。これを見ると、大阪市内よりも郊外の方が弁護士に対する需要の高いことが分かります。皆さんはこの数字を見てどう考えられますか。

表1 登録弁護士数 新受件数 弁護士一人当たりの
新受件数
大阪本庁
2,999人
38,462件
12.8件
堺支部
47人
6,277件
133.6件
岸和田支部
20人
3,348件
167.4件
尼崎支部
54人
4,195件
77.7件
姫路支部
56人
3,646件
65.1件
伊丹支部
15人
1,604件
106.9件
明石支部
17人
1,467件
86.3件

表2 登録弁護士数 相談件数 弁護士一人当たりの
相談件数
大阪本庁
管内合計
2,999人
36,344件
12.1件
大阪簡裁
2,935人
15,501件
5.3件
池田簡裁
8人
1,273件
159.1件
豊中簡裁
13人
2,602件
200.2件
吹田簡裁
12人
2,257件
188.1件
茨木簡裁
8人
4,341件
542.6件
東大阪簡裁
7人
3,398件
562.6件
枚方簡裁
16人
6,432件
402.0件


2 確かに、分析の仕方によっては数字のマジックではないかと思われるかもしれません。しかし、一面では、地方にこそ需要があることも示しているのではないでしょうか。

ところで、大阪弁護士会では、大阪市、堺市及び岸和田市を除く区域に法律事務所を開設する会員のために、支援システムを用意しています。このシステムの概略は次のとおりです。

  1. 貸付制度―金700万円を上限とする資金の貸付制度があり、3年間の据置期間後、5年間で返済するもので無利子です。
  2. その他―事件の紹介、マスコミ、地元の自治体に対して事務所の広報をするというメニューがあります。

3 例えば、これらの法的需要を考えて、支援システムを利用し大阪簡裁管轄下以外の場所で事務所を開設することも、事務所開設の選択肢の一つとして考えられるのではないでしょうか。特に、事務所の法人化をはかると、支店を出すことも自由になりますので、郊外の法的需要に直接応えられるのではないでしょうか。郊外に定着型の事務所を出し、郊外の法的需要を直接汲み取ることで、弁護士に対するアクセス障害をなくすることにもなります。

以上