大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)
1 適正な額でない国選弁護報酬
国選弁護事件の報酬が適正か否かについて、具体的に考えてみます。
刑事裁判に関する被告人国選弁護事件のうち、その約60%が、2回の裁判期日で判決までの手続が終了する事件ですので、それを例にとります。
このような国選弁護事件について、弁護士が弁護活動に要する時間及び報酬を見ると下表のようになっています。
時間 | 報酬 | 1時間当たりの額 | |
2回で終了する国選事件 | 約12.1時間 | 73,000円 | 6,033円 |
この報酬は適正なものなのでしょうか。
『否』です。
つまり、弁護士の売上に占める経費を分析すると(弁護士白書)、1時間当たり8,313円を稼いではじめて経費相当額を稼いだことになります。そうすると、下記表の「1時間当たりの額」6,033円を見れば、弁護士の経費すらまかなえていないことになるのです。国選弁護事件をすればするほど、弁護士事務所の経営は成り立たないという図式になっているのです。
刑事弁護の意味からいうと(この点については、第6弾の「適正な国選弁護報酬の実現に向けて」で説明しております。)、国選弁護報酬の増額は、弁護士の刑事弁護活動を支える土台の一つを確かなものにするといえます。
2 国選弁護報酬の増額に向けたアンケートの実施
今回のアンケートの実施要領は下記のとおりです。今の国選弁護報酬が,前記のとおりの調査結果からみて増額すべきものであるならば、それだけの予算付けをしようとするものです。被告人国選の場合、東京、大阪の件数が圧倒的に多いため、このアンケートの帰趨を決めると言っても過言ではありません。大阪では1ヶ月単位で見ると、被告人国選事件(刑事裁判)約600件、被疑者国選事件(刑事裁判前の取調べ中)約50件です。
私達弁護士は、国選、私選を問わず、日頃から手厚い熱心な刑事弁護をしています。この刑事弁護の実体がアンケートに反映されるように、正確に記載してください。
大阪弁護士会会員の皆さん、ご面倒でもご回答よろしくお願いします。
以上