第13弾!! 弁護士が依頼者の方に身元確認を求める場合があります

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

1 2007年7月から弁護士が依頼者の方に対し、身元確認を求める場合があります。

これは、日弁連によって定められた「依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程」に基づき求めるものであり、弁護士の義務です。

この規程は、法律事務を独占し社会正義を実現する地位にある弁護士が、犯罪によって取得した収益の移転(マネーロンダリング等)という違法行為に関与しないために設けられたものです。


2 では、依頼者の方はどのような場合に、弁護士から「身元確認」を求められるのでしょうか。

依頼者の方が「身元確認」を求められる場合は、次のような場合です。

(1)新たに一定の事件を弁護士に依頼する場合
これは、下記の取引等について、依頼を受けた弁護士が依頼者のために、その準備又は実行する場合をいいます。
  1. 不動産の売買
  2. 会社の設立又は経営を目的として出資をし、又はこれに類する資金を拠出する行為
  3. 法人の設立又はこれに類する団体を設立する行為
  4. 信託契約の締結
  5. 会社の買収又は売却
(2)資金を弁護士に預ける場合
これは、依頼者の依頼を受けて、弁護士が、法律事務に関連して、依頼者の口座を管理したり、依頼者から現金(送金を含みます。)、有価証券その他の資産(合計が100万円以上のもの)を預ったり、そのような資産を管理する場合です。
但し、下記のような場合は「身元確認」を求められることはありません。
  1. 依頼者が弁護士に対し、裁判所、法務局、金融機関その他の機関に予納金、供託金、保証金その他これに類する金員を納付するために金員の預託をする場合
  2. 依頼者が弁護士に対し、依頼者その他の関係人の債務の履行のために金員を預託する場合
  3. 弁護士が、相手方その他の関係人から依頼者のために弁済金、和解金その他これに類する金員を受領する場合
  4. 依頼者が弁護士に対し、報酬又は費用の前受けとして金員の交付をする場合

3 依頼者の方が身元確認を求められた場合、どのような書類を提示したらよいのでしょうか。

依頼者の方が個人と法人の場合に分けて説明しますと、下記のようになります。

  1. 個人の場合
    運転免許証、パスポート、健康保険証、年金手帳、外国人登録証等
  2. 法人の場合
    法人の名称及び主たる事務所の所在地の記載のある登記事項証明書、印鑑登録証明書などの書類及び実際に依 頼その他の事務を行う担当者の氏名及び役職が記載された名詞などの書類

4 以上のとおりですので、依頼者の方は、「身元確認」を求められる趣旨につきご理解いただいて、弁護士から「身元確認」を求められた場合は、ご協力の程宜しくお願いしまます。また、弁護士は前記2のような場合は、「身元確認」を求める義務がありますので、ご注意下さい。

以上