第14弾!! 弁護士偏在解消促進のための取組み

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

1 弁護士偏在の実態

弁護士1人あたりの人口は、各都道府県別に見ると、東京が1,175名、大阪が2,962名と少なく、多いところは青森の31,239名を筆頭に、1万名以上を越えている県は実に37県に上ります。これをもう少し範囲を狭めて、地方裁判所の本・支部管轄別(252箇所)に見ると、弁護士1人あたりの人口が3万名を超えている地域は133箇所にもなります。

このように、弁護士偏在は、法曹人口が増加しているにもかかわらず、解消される気配はありません。


2 弁護士偏在解消促進のための経済的支援策の試行

このような状況に一石を投じ、弁護士偏在解消を促進する策が日弁連から出ました。

(1)支援策の内容
これは、偏在解消対策地区に対し、主として次のような経済的支援を行うことを目的としたものです。
ア.偏在対策拠点事務所開設資金援助
(この事務所は偏在対応弁護士を養成して送り出す拠点事務所であって弁護士会・弁護士会連合会が開設する事務所)
開設資金として1500万円を給付する。但し、弁護士会・弁護士連合会が技術的支援をすることが条件です。
イ.偏在対応養成事務所拡張支援
(この事務所は既存の法律事務所を拡張して偏在対応弁護士を受け入れて養成する事務所)
事務所拡張費用として200万円を無利子貸付する。3年経過時までに偏在対応弁護士1名以上を偏在解消対策地区に送り出した場合は、返済免除とする。
ウ.偏在対応養成事務所養成費用支援
(この事務所は既存の法律事務所が偏在対応弁護士を通常の勤務弁護士として受け入れて養成する事務所)
100万円の給付をする。3年経過時までに偏在対応弁護士1名以上を送り出さなかった場合は、原則として返還しなければならない。
エ.偏在対応弁護士赴任準備支援
(既登録弁護士のみ)(この弁護士はアまたはイの事務所に所属し、あるいはその他の事務所に所属して、2年程度以内に偏在解消対策地区に赴任する偏在対応弁護士)
100万円の無利子貸付をする。赴任する弁護士に一定の公益活動を義務付け、5年経過時に偏在解消対策地区赴任後2年を経過し、一定の要件を充たせば、返済免除とする。
オ.偏在対応弁護士独立開業支援
(経験者型)
事務所開設費用として250万円、当初の運営費用支援として100万円を無利子貸付する。一定の公益活動を義務付け、5年経過時に偏在解消対策地区赴任後2年を経過し、一定の要件を充たせば、返済免除とする。
カ.偏在対応弁護士独立開業支援
(即独立型)
オと内容は同一です。なお、これに加え、弁護士会・弁護士連合会が技術的支援をすることが条件です。
(2)支援策の対象となる偏在解消対策地区とは
経済的支援策の「偏在解消対策地区」とは次のいずれかの要件を充たした地区です。
(ⅰ).地方裁判所支部の管轄区域であって、当該地域に法律事務所を置く弁護士1人あたりの人口が3万人を超えるもの
(ⅱ).市町村であって、当該市町村及び当該市町村に隣接する市町村に法律事務所又は法律相談センター(当該市町村に隣接する市町村に存在する法律事務所又は法律相談センターにあっては、当該市町村の役場から30キロメートル以内の地域にあるものに限る)が2カ所以上存在ないいもの
(ⅲ).(ⅰ)又は(ⅱ)に準ずる地域その他の弁護士偏在解消のために特別な対策が必要と認められる地域

3 大阪弁護士会で考えるべきこと

大阪府下は面積も狭く、交通の便が良いため、他の偏在解消対策地区と比べ、弁護士に対するアクセス障害はそれほど大きくはありません。

しかし、日弁連が弁護士偏在解消に向けて取り組んでいる中で、当会も会を挙げて取り組めるものがないかを検討し、実行すべき時期に来ています。当会の役員室では、都市型公設事務所として設立された大阪パブリック法律事務所に弁護士偏在解消の人材派遣養成事務所の機能を持たせることを検討しています。

また、近畿弁護士会連合会(大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山で構成されている)でも、当連合会内にある弁護士偏在の解消のために取り組めるべきものがあるかを検討している最中です。

以上