第10弾!! 近畿地方の弁護士数と2009年問題

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

1 近畿地方には、どのくらいの数の弁護士がいると思われますか。2007年4月1日現在で、大阪府下で3053名、京都府下で409名、兵庫県下で532名、奈良県下で109名、滋賀県下で74名、和歌山県下で84名です。そして、各府県下の分布状況を見ると、大阪本庁管内に2999名、京都本庁管内に390名、神戸本庁管内に354名、奈良本庁管内に80名、大津本庁管内に54名、和歌山本庁管内に71名で、概ね県庁所在地に集中し、地方に弁護士が少ないことが分かります。地方から見ると、弁護士に相談したくとも、身近に弁護士がいない状況になっています。


2 このような状況を改善するために、日弁連では、政策的に地方に弁護士事務所を開設する運動を展開しています。例えば、近畿地方にも10箇所のひまわり基金法律事務所を開設しています。具体的に言うと、京都では宮津、園部、亀岡、京丹後、山城、兵庫県では丹波、龍野、淡路島、和歌山では御坊、新宮です。

ひまわり基金法律事務所とは、日弁連、各地の弁護士連合会や弁護士会が関与して設立・運営される法律事務所で、開設費用や運営費用の援助のほか、事務所運営の支援などを受けている事務所です。

このような事務所を設置することによって、誰でもどこでも弁護士に相談できる体制を整備しようとしています。


3 しかし、まだまだ十分な体制を整備できているわけではありません。今、2009年問題といわれる問題があります。こう言われても、大阪弁護士会の会員も含め何の問題かピンとこられない人が多いのではないでしょうか。2009年問題とは、2009年から、必要的刑事弁護事件まで対象事件を広げ被疑者国選が始まりますが、これを受ける弁護士の体制が整っているのかという問題です。

被疑者国選とは、裁判を受けるまでの取調べを受けている段階で付く国選弁護士のことです。この被疑者国選は昨年の10月からスタートしましたが、2009年からは、必要的刑事弁護事件まで対象事件が拡大されます。

そうしますと、弁護士の数が少ない地方では、今の弁護士だけでこの被疑者国選制度を担えるのかという問題があります。


4 大阪は、他の府県と比較して、弁護士数が多い上、面積も狭く交通の便が良いことから、2009年問題が投げかける影響も少ないように思われます。しかし、考えなければならないことは、被疑者国選制度が始まったときに他の府県でその需要に応えられない場合、その批判は、弁護士全体の責任として跳ね返ってくるということです。つまり、我々大阪弁護士会もその責任を問われるということではないでしょうか。


5 今、私達役員は、2009年問題を含めた弁護士過疎に対する大阪弁護士会が果たすべき役割について、色々と検討をしております。例えば、弁護士の少ない地方に派遣する弁護士の養成システムの構築を検討しています。特に、大阪弁護士会には都市型公設事務所がありますので、これを中心とした養成システムが構築できないかを検討しています。

以上