第17弾!! 弁護士の研修義務化について

大阪弁護士会副会長 今川 忠(34期)

1 弁護士の研修義務化が始まる

本年度から、研修義務化制度が始まりました。この制度は、一年間に、指定された講座を10単位以上受講しなければならないという制度です。10単位とは、1時間1単位ですので、年間10時間受講することになります。


2 研修義務化制度の狙い

この狙いは、弁護士に一定の質を備えさせることです。

弁護士は、弁護士法第72条に定められているとおり、法律事務の取扱を独占しています。このように弁護士が法律事務を独占している以上、弁護士は誰でも、法的需要を満たす一定の質を備える必要があります。これを各弁護士の自助努力を待つだけでなく、大阪弁護士会がその一助となるようにと作り出した制度が研修義務化制度なのです。弁護士の人数が大幅に増加する時代を迎えて、各人の自助努力だけに頼っていたのでは、弁護士全員が均質的に一定の質を備えることは難しくなってきたのではないでしょうか。そして、弁護士会には、弁護士が法律事務の取扱を独占している以上、弁護士に一定の質を備えさせる責務があると考えます。


3 より一層の研修の充実を目指して

研修をより充実したものにするには、研修対象講座を充実させることが必要です。これは、次の三点から考える必要があるのではないでしょうか。

1)基礎編講座の充実
最近の弁護士数の増加を考えると、研修対象者に占める新人弁護士の数は相当数に上りますので、これらの新人弁護士を対象とした基礎編講座の研修を充実させる必要があるのではないでしょうか。
2)専門講座の充実
世の中は一層複雑化するとともに専門分野毎に細分化される時代に突入していますが、私達弁護士も、そのような世の中の需要に応える必要があることは当然です。そうしますと、今以上の専門講座の充実が必要です。例えば、10単位を一くくりとしてまとめて、一つの専門的なテーマについて連続的かつ統一的に研修する専門講座などを設置する時期に来ているのではないでしょうか。
3)実務との連携
経験を積んでいない弁護士が研修対象講座を受講しても、実際に事件等として取扱をした経験がないために、本当の意味で身につかないということがあるのではないでしょうか。研修を受けたら、そのことが即弁護士の身につくものにするためには、例えば、研修を受けた弁護士がその受けた研修を即実践できるような機会を提供できる制度作りをしていかなければならないと考えます。

「自ら努力して得たものを人や社会に活かすこと」が大切なことは当然です。そのためには、弁護士各人の自助努力を前提として、弁護士の研修義務化制度が弁護士各人の自助努力を促進するようなものにしなければならないと考えます。

以上